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熱海の見えかたが変わった
今回楽しんだのはここ
↓
熱海を訪れるのは初めてではない。
20代前半の頃、夜勤明けの疲れた身体でそのまま電車に飛び乗り、好奇心のみで熱海に向かったことがある。
計画も目的も何もなかった。ただなんとなく。
初めて降り立った熱海駅は、当時のわたしにとっては正直魅力的ではなかった。
建っているのは旅館やお土産屋だけで、正面に海が広がっているわけでもない。
海まで少し歩かなければならないと考えるだけで、気だるく感じた。
夜勤明けで疲れていたこともあっただろうけど、偉そうに
「熱海ってこんなもんなのか」
と若干24歳のわたしはため息をついていた。
その後、20代後半で友達2人と熱海旅行に出かけたこともあった。河津桜を見に行き、帰りに熱海の旅館に一泊した。
友達が車を出してくれたこともあり、移動がとても楽で行きたいところに直接アクセスできてなんともありがたい旅だったが、逆に「熱海」を「味わう」ことはできなかった。
自分が行きたいところ、相手の行きたいところに折り合いをつけながら行き来し、意外と気遣いばかりに時間を割き、肝心の景色は二の次になってしまう。
帰ってきて思い出すことはたいてい友達と話した内容ばかりで、熱海の空気や頂いた料理は不思議と思い出せないのである。かろうじて写真を見て思い出す程度だ。
あぁ、自分はこんなにも気を遣いまくって旅していたのか…と、どっと疲れてしまったのを覚えている。
友達と会うのは近場で十分楽しいんだ、と思ったものだ。
良い思い出の少ない熱海だけど、30代に入ってとうとうひとりで行ってみることにした。
それがつい最近34歳。
コロナの影響で人と会う機会がかなり減り、旅館の空き室も増えている時期だった。
自分の誕生日も近いこともあって、自分へのご褒美にと熱海駅近くのホテルを予約し、人との接触を避けられるよう到着を夜にし、弾丸一泊旅をした。
人のまったくいない静かなサンビーチやムーンテラス
小雨でひかえめに濡れた石畳が、街灯の光でやさしく照らされた糸川遊歩道
寝静まった商店街など
賑やかな観光地とはひと味違う熱海の街並みを見れたことで、わたしの熱海に対する見方が変わった。
(単純に年を重ねたこともあるだろうけど)
熱海を小馬鹿にしていたわたしが、いまではすっかり虜だ。
わたしが感じた熱海の魅力と宿泊ホテルのこと(2021年3月&11月)をたっぷりと紹介してみようと思う。
[熱海]ムーンテラスを歩いたり「貫一お宮の像」を見たり。
20代の頃にはまったく感動しなかった熱海の海。
30代に入ってこんなに大好きになるとは思わなかった。
早朝の海、夜の海。歳が上がると真昼間の海よりも朝か夜のほうが断然落ち着くのはなぜだろう?
きっと大人になるにつれて面倒な人間関係や雑事に追われ、つかの間の休日くらいは人のいない静かな空間を求めるからなのだろうか。
わたしはそうだ。
20代の頃はとにかく人とつながっていたかった。誰かと一緒じゃないと仲間外れにされているようで怖くなったし、毎日不安で仕方なくなった。
たとえ自分は納得いかなくても、孤立してしまうことを天秤にかければ答えは決まって「相手に合わせる」だったし、休日に予定が入っていないと急いで暇な友達を探していたし…
女子中学生の延長のような20代だった。
FacebookやInstagramで知り合いのリア充を見つけては悔しがり、自分もリア充を装って投稿してみたりもした。常に人に左右され自分を見事に見失っていたのだと思う。
というより、自分のことを何ひとつ理解できていなかったように思う。
自分は何にときめいて、どんな音楽が好きで何をしている時が一番幸せなのか、きっとあの頃のわたしは答えられなかったんじゃないかな。人の顔色を気にしながら無難な答えを探していたと思う。
そんなだから、いきなり熱海に来てみても何も感じないわけだ。
懐かしい20代である。
歳を取るのはいいもんだ。
さて、熱海駅から海岸へ向かう途中で「お宮の松」を見ることができる。
国道135号線沿いに位置しており、のんびり歩いていると見逃してしまうので国道に出たらあたりを見回してほしい。
「お宮の松」は、明治時代に書かれた尾崎紅葉の小説「金色夜叉(こんじきやしゃ)」の中で、高等中学校の学生・貫一(間貫一)が許婚のお宮(鴫沢宮)を蹴り飛ばし別れを告げるシーンが描かれた場所。
貫一お宮の像は
「いいか宮さん。来年の今月今夜…再来年の今月今夜…、10年後の今月今夜…、一生を通して僕は今月今夜を忘れん、僕の涙で必ずこの月を曇らして見せる。」
と名台詞を残し、お宮を足蹴りし立ち去るシーン。
あらすじを読んだだけでも、人と人とのすれ違いのもどかしさを痛感してしまう。男女であればなおさら修復できるかなんてわからない。いやできないほうが圧倒的に多いと思う…
像は最初、女性蔑視と抗議が起こったらしいけど原作は変えられず、宮の乱れた裾を止め表情も和らげた作品にしたそうだ。(お宮緑地|熱海市公式ウェブサイト (atami.lg.jp)より)
小説を読んでいる人なら確実に楽しめる、読んだことのない人なら小説をチラッと知りたくなってしまう、そんなお宮の松とリアルな貫一お宮の像をゼヒ見てみてほしい。
[熱海]起雲閣を訪れてみる
1日目は熱海の到着が夕方以降だったので、早めにホテルにチェックインしのんびりすることにした。(宿泊ホテルの紹介は最後に。)
スッキリな目覚めの2日目。
夜に近辺をリサーチして行き先を起雲閣と熱海城に決めた。もちろん歩いて向かう。時期的にもウォーキングがちょうどいい。
向かった起雲閣の情報はこちら
施設案内 起雲閣(熱海市指定有形文化財)|熱海市公式ウェブサイト (atami.lg.jp)
物欲があまりないわたしの旅は、基本的にひたすら歩く。歩いてその地域の空気や生活感を肌で感じ、その土地でしか経験できない空間を味わう。
それがわたし流の旅になりつつある。
予定はぎっしりにせず疲れたら休む。休んだらまた歩く。車での旅と比べたら回れる範囲もかなり狭まってしまうけど、そのぶん一ヵ所での濃厚な時間を過ごせる。
そんな旅が好きだ。
名前すら知らなかった起雲閣でも、かなり濃厚な時間を過ごした。
入り口は少々迷ったが…入園料610円を支払い、中へ。
ちなみにこの起雲閣とはどんなところなのかというと…
起雲閣は1919(大正8)年に別荘として築かれ、現在は非公開の岩崎別荘、今はなき住友別荘とならび、「熱海の三大別荘」と賞賛された名邸が基となっています。1947(昭和22年)には、旅館として生まれ変わり、太宰治・山本有三などの多くの文豪たちにも愛されていました。
熱海市㏋ 施設案内 起雲閣(熱海市指定有形文化財)概要より
とある。
なるほど実際に建物内へ入ると、著名な作家たちの説明や小説の一部が残されている。
このブログでは簡単に一部の写真を載せておく。
(起雲閣の事は別の記事に改めて書く。)
入り口付近にはボランティアのおばちゃまが待機してくれていて、うまく流れに乗れると最初から説明を聴くことができる。聴いたほうが断然巡るのが楽しくなるはず。
わたしはというと、遠くから盗み聴きしようと頑張ってみたものの全く聴こえず、戻って聴くよりはどんどん進みたかったから諦めたけど、正直ちょっと後悔している。笑
貴重な地元の方のお話、聴いておけばよかったなぁ~。
建物内も旅館になっていただけあってなかなか広かったけど、庭園も負けないくらい広々としていた。
運よく庭を散策している人がまったくいなかったので、お得意の独り占めタイムを楽しんだ。ベンチはないから座って黄昏るわけにはいかなかいけど、ぶらりと緑を楽しむには十分だ。
偶然出逢った今宮神社と可愛い古民家カフェ
のんびりと起雲閣を楽しんだあとは、熱海城を目指して山道を登ってみることにした。
Googleマップで確認する限り、そんなに大変でもなさそうだしとにかく歩きたいわたし。起雲閣から少し方向転換し歩き始めるや否や、住宅地の中にとてつもない大木が現れた。
だめだ、素通りできない。
気になりすぎて無意識に大木のほうへと向かっていた。
近くまで来て目の前に現れたのは神社。名前は「今宮神社」というらしい。
↓
木々がみな高くて柔らかく揺れ、奥へ招き入れてくれているかのよう。雰囲気も明るく、思わず深呼吸したくなる。
御祭神は
事代主命(ことしろぬしのみこと)
大国主命(おおくにぬしのみこと)
だそうだ。どちらもいつか読んだ古事記に出てきた神様だ。…というくらいしか知識はないが、なんでもこの今宮神社の歴史は古く、大和時代の仁徳天皇の御世(313~399年)の創建と伝えられているらしい。
そして、源頼朝も深く関わっている神社だそうで、頼朝が伊豆に流されていたころ、熱海の山中に迷い込んだ際に大楠の下にあった社に祈り、無事に追手から逃れることができたことから、その後殿を造営するなど心を尽くしたのだそう。
そのことから、今宮神社は「願い事のかなう宮」として多くの人の崇敬を集めることになった。
前知識なしでいきなり訪れたが、この時に引いたお御籤が「大吉」だったことがやけに嬉しい。
参考資料
今宮神社で神聖な空気を吸ってリフレッシュしたあと急激にお腹が空いてきた。
神社のすぐ脇に隠れ家のように建っているカフェへ入ってみた。
Googleマップで見つけて気になっていた「古民家カフェ haru」だ。
内装をガラリと変えたのだろう、古民家の元のイメージとリノベーションした雰囲気がマッチしていて安心できる造り。
時刻は12:00ちょうど。お客さんがちらほらといてのんびりと寛いでいる。
陽の光もよく入り、どこにいても明るいのがまた安心できる。
メニューはそこまで多くはないが、わたしはひと目で鶏そぼろ丼に決めた。
理由は…特にない。ただ直感で食べたいと思ったからだ!笑
具だくさんのそぼろ丼にやさしい味の大根スープ。美味しかった。
のんびりと食べ、食後のコーヒーも頂き一息ついてからカフェを出る。
満足だ。
店を出るときはなんだか「お邪魔しました~」と言いたくなる構えだった。
またいつか寄りたい古民家カフェだ。
坂をひたすら歩いて登ったあとに見た熱海城が最高だった
お腹がちょうどいい状態になったら、やっと目的の山登りへ。山登りと言っても住宅街のキレイに舗装された道路をひたすら歩くだけだけど、これが思ったよりも急坂で驚いた。
今宮神社からほんの15分ほど歩いただけで、あっという間に熱海の景色が一望できる所まで行ける。
熱海城はまだ見えないが、すでに足が張っている。
旅館やホテルが連なっているのが見え、あらためて観光名所なのだと実感する。上から望む熱海も魅力的だ。
歩き続けているとだんだん住宅はなくなり、完全な細い車道だけになった。車道の脇を歩いて山を越えることが度々あるわたしにとっては、見慣れた風景。
山道は滅多に車は来ないから、静かな空間を広々とのんびり歩けるし整備されているからスムーズに進める。
熱海城が全く見えず少し不安になったあたりで、目線の下に突然現れた。
まさか見下ろすとは思っていなかった。笑
もうここまで来ると足はカクカク、さらに熱海城までは少し下らなくてはならず、膝がひどい震え方をした。こんな時間がおとずれるのも山登りならでは!
なんとか目的地の熱海城に到着。
熱海城はほぼ素通りになったので説明は割愛するが、思ったよりも新しかったしエンターテイメント感が強かった。
予定ではそのまま歩いて下山するはずが、もう足が動かず一目散にアタミロープウェイへ。
30分以上かけてせっせと登ってきた山をたったの3分で下ったのだった。
料金は
片道 | 往復 | |
大人 | 400円 | 700円 |
小人 | 300円 | 400円 |
※大人料金 → 中学生以上
※小人料金 → 4歳以上小学生以下
※4歳未満の幼児は、無料でご乗車いただけます。
※片道券の割引はございません。
だそうで、ちなみに2022年6月20日(月)~7月8日(金)までは設備更新工事実施のため、ロープウェイは運休するらしいのでご検討中の方はご注意を。
20代の頃には決して感じなかったであろう筋肉痛とともに、自分なりの熱海の楽しみ方も見つけた気がしてとても嬉しくなった。
やっぱり歳を取るのはいいものだ。
伊豆の海ホテルに泊まったら家みたいだった(2021年11月)
さらっと宿泊ホテルの紹介もしたいと思う。
11月はとにかく宿泊代を抑えようとホテル選びをし、こちらの「伊豆の海ホテル」に一泊した。料金は旅行サイトを利用して5,000円台と安かった。
近くのセブンイレブンと業務スーパーで色々買いこんで、夜チェックイン。
10人入ったらいっぱいになるくらいの可愛らしいロビーで、部屋の入口も何だか宿と言うよりはアパートに帰ってきたような感覚になる造り。
サクッと素泊まりさせてもらうにはちょうどいい親しみやすさがある。
電子レンジの備え付けもあって、家具の配置がひとり暮らしの部屋みたいでやけに居心地が良かった。
そして何よりもオーシャンビューが素晴らしかった!(最上階4階海側の部屋)
ホテル貫一さんに泊まったら贅沢だった(2021年3月)
3月の誕生日記念で訪れた時には少し奮発をしてみた。といっても1万円はいかないし、誕生日前後ということで部屋をグレードアップしてくれた。
そんな「ホテル貫一(Booking.comサイトです)」
受付のスタッフさんが温かく迎え入れてくれた。
最上階のお部屋へ。
部屋で一息ついてから貸し切り露天風呂へ。なんと贅沢な時間。
布団もふかふかで気持ちよく、熟睡した。もちろん朝起きたら浴衣の乱れ具合がひどかったけど。
どうしたら乱れずに寝れるのか教えてほしい…。
一泊では足りないくらい贅沢感があった。
時間をしっかり作ってのんびりと泊まりに行きたいホテルだ。
最後にひとこと
歳を重ねるごとに、同じ場所でも見え方や感じ方が変わってくる。
新しい場所をどんどん開拓していくのも楽しいが、こうして何年かおきに同じ場所を訪れてみて、その時々での自分の感じ方を味わってみるのも面白いかもしれない。
そして、熱海は歳が上がれば上がるほど夢中になってしまうスポットがたくさんある。また泊まりに訪れてみよう。
そんなことを感じさせてくれる熱海はやっぱり魅力的だった。
Sawako
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